HOME > News > 太陽光発電所の建設と実態について2014

太陽光発電所の建設と実態について2014
(安易な造成や太陽電池選びによる被害予測)

浅川太陽光発電所
所長 浅川 初男

日本版、固定価格買取(フィールド インタリフ)制度(2012.06)の開始とともに、個人太陽光発電所の建設が急増し、全国に急速に展開してまいりました。
各種太陽光発電所が、日本の各地に建設されに従い、建設に携わる企業の技術力能力の差、設置環境の違いからトラブルの発生が数多くあり、今後の太陽光発電ビジネス全体に、暗雲がたちこめる懸案が多数有り、懸念されます。


固定価格買取制度、導入当初は、様子見をしていた各種業界が、2013年には、こぞって太陽光発電ビジネスに参入したことにより、設置場所と設備認定の陣取り合戦の様相をていし、有望場所には複数業者から事業提案がなされ、同時申請により、同一地番での重複設備認定がなされ、事業推進のために同一ヶ所での重複(申請者別々又は、低圧・高圧)と言う事態が発生しました。
この時点では、これら重複IDは、問題なかったのですが、事業開始までの期間が越年できる(後に期間設定)ことになってから、この事業IDを他者に譲るブローカーが発生して問題になり、事業開始期間設定がなされ、悪徳業者の排除に移行する。
多くの業者は、事業IDを取得してから、設置場所を探すことになり、太陽光発電有望地域には、集中して建設事案が押し寄せる結果となり、電力会社との協議(電力網への連結)が、出来て、いないにもかかわらず、建設に踏み切ったために、太陽光発電所が完成しても、電力会社へ(系統連系)売電できずに、運転していない、ゴースト太陽光発電所が多数みうけられる。(数MW分)


前にも、太陽光発電所の建設手順は、ご説明したと思っていましたが、あまり知られていないようなので、今一度、簡単な必要条件と、手順を確認したいと思います。

○ 必 要 条 件

○ 太陽光発電所を建設可能な土地や建物を持って(取得して)いること。
○ 太陽光発電所の建設予定地に電力網が隣接していること。
○ 建設予定地の地域を管轄する電力会社との協議が出来ること。
 (電力会社の電力網に系統連系が出来ること)
○ 太陽光発電所事業の事業IDを取得できていること。

○ 建 設 手 順

1. 太陽光発電所を管轄する電力会社との系統連系協議が終了していること。
(電力会社の電力網へ繋がることができ、売電が可能なこと)            
2. 建設予定地の周囲との調整(隣接地との許可)が終了していること。
(建設予定地の地形を考慮した設計になっていること(風・水・降雪・雷・地盤・造成安全対策を取っていること))
3. 太陽光発電所の建設の業者が決定しており、期間内に工事が終了すること。     
4. 建設資金の調達が可能であること。




などが、主な簡単な手順になります。      
これらの手順を踏まえていないのか、今回、北杜市内を調査したところ、太陽光発電所が、完成しているにもかかわらず、数ヶ月以上系統連系(売電)されていない太陽光発電所が複数有り、運転をしていない発電所には草が生い茂り、数Mワットがゴースト太陽光発電所になっておりました。


一方では、完成を目指して、工事中であるが、設置環境の整備がなされていないために、土砂流出にみまわれ、近隣住宅や道路まで、造成した土砂の流出しているのが確認できました。
これらの場所は、広範囲に太陽光発電設備が建設され、個々の発電所は、50kW以下で、複数配置の場所で、当初より、降雨対策の取られていない場所や、大規模発電所でも、設計よりも多くの降雨や出水にみまわれ、土砂の流出が発生した場所などが確認できました。
自然環境の変化に対応できる設計が大切であることは、今春の豪雪でお知らせ致しましたが、今回、土地の形状に合わせた降雨対策が取られていない発電所が殆どで、時間雨量100㎜を超える雨量があった場合は、南斜面に設置してある斜度10度以上の太陽光発電所では、太陽電池に降りそそいだ雨水により、土砂の掘り起こしが発生して、大量の土砂が流出することが予測できます。
私どもの調査でも、豪雨後太陽光発電所に面した道路に、大量の土砂の流出があり、道路が数百mにわたり、茶色に変色しているところや、住宅の庭に土砂が流入して、大急ぎで、土砂止めの壁を作った様子が確認できました。
安易な、造成工事で、急傾斜地に太陽光発電所を設置した場合は、気象変動が激しい昨今は、ゲリラ豪雨(時間雨量で100ミリを超えた場合)等にみまわれた場合は、土砂流出だけではなく、地滑りの原因にも繋がりますので、排水路と雨水一次貯留施設の建設が必要です。


『急傾斜地に太陽電池が大規模集中して設置された場合は、大屋根を急傾斜地に掛けたのと同じで、大量の雨水が低い場所めがけて集中して、押し寄せることになりますので、南斜面で雨水面積の広い太陽光発電所は、思わぬ出水や豪雨に対して、土砂流出を防ぐためにも、排水施設や一次貯留施設を設ける安全対策が必ず必要である』

○ 安 易 な 太 陽 電 池 採 用



今回多くの、太陽光発電所を独自調査して、分かったことは、多くの場所で、太陽電池の品質と認証がなされていない太陽電池が使用されていたことでした。
太陽電池の品質保証とは
太陽電池の主な認証機関はヨーロッパに多いTUV認証(ドイツ系)
日本においては、JET認証(太陽電池の信頼性や安全・性能について)
さらに国際的には、IEC61215やIEC61730〜やUL規格などの信頼・安全基準
国際標準基準のISO9001(品質)やISO14001(生産環境基準)
日本においては、JIS基準


国際的には、リサイクルも求められ、PV Cycleの認証が求められています。
残念ながら、日本においてはリサイクルについては、適用されていませんが主な海外製品には、このリサイクルマーク付いています。
さらに、海外においては、労働安全衛生基準とも言える
BS OHSAS18001(イギリス基準)やSA 8000などがあり、労働環境まで認証されていることが求められますが、なぜか日本では適用されていません。


EU加盟国の規格基準を満たすものに付けられる基準適合マークとして、CE認証マークがあります。




日本企業も海外に輸出する時は、これら認証基準等を取得するのに、なぜか日本市場は適用しない。このことにより、多くの消費者が被害を被る結果となることが明白なのに不思議な業界指導である。
かつて、日本車が海外の排ガス規制をクリアーして、国際市場にて、一躍トッ
プに躍り出たのと同じように、国際基準と日本基準の両者を取り入れた製品に付いて、安心して使用できるよう特に、リサイクルについても、国内においても国際基準を適用すべきであると考える。


参考   各種太陽電池認証・基準等のマーク(ネットより)

このくらいのマークが付いた太陽電池を使用すると、20年位は安心して、使用することができる目安になると思います。
このほかには、太陽電池の変換効率と、経年劣化について、配慮する必要があります。変換効率に付いては、市場に出回っているのが10%〜20%と、大きな開きがあり、変換効率の低いものほど市場価格は低いようです。(化合物は除く)


経年劣化に対しても、20年単位で10%以内のものから、5年を経過後、急速に劣化するものもあるようで、一様ではありません。
(2018年頃から急速劣化が心配される)


今回、調査を実施したところ、多くの太陽光発電所に使用されている太陽電池には、これらの認証マークの無い製品が多数使われており、品質保証面だとEU規格のマークしか付いていない太陽電池が使用されており、驚きました。
価格破壊で、品質よりも設置価格の安価を優先した結果と言えますが、固定価格買取制度の20年の期間中、適切な認証マーク等の無い製品では、安心して発電できる製品かどうかは疑問です。
また、設置架台にしても、降雪対策として傾斜のきつい設置も見受けられますが、設置架台の背が高く、強風対策が求められますが、設置してある太陽電池と架台は、車の通過振動があると、揺れているのが確認できましたので、振動と強風が重なった、共振状態となった場合は、甚大な被害が発生すると思われます。


10kWを超える太陽光発電システムに付いては、事業用発電所となり、設置者の責任においての事業発電となりますので、設置者責任で対応することになります。設置者(事業者)が、システム設置価格を低く抑えるために、安易な造成や、安易な架台、太陽電池選びを行っている様子が多々見られ、適正な認証品を使用していないことが原因で、太陽光発電所が崩壊した場合に、海外と比較して、数年後には、設置者責任があるリサイクルシステムを取り入れていない日本において、不良太陽電池の集積地になるかもしれない危険性が見えている。


このごろの太陽光発電ビジネスを観ると、不良太陽電池の発見をビジネスモデルに、太陽光発電所向けの保険ビジネスや、遠隔監視ビジネスなど多岐にわたって、裾野が広がっています。


私が、20年間にわたって太陽光発電所を運営して来て、分かったことは、質の良い製品は、20年経っても壊れないことと、アフターケアーがあるメーカーとの取引では、メーカーが存在している間は、低価格の太陽電池であっても有償で、アフターケァーをしていただけたことです。
長期のビジネスとなる太陽光発電ビジネスは、太陽電池を製造しているメーカーが20年以上存続できる努力を行い続けるメーカーであることが求められ、信頼できる認証製品で、安定した発電を保障できるものを提供しているメーカーを選ぶことが、大切な必須条件であることを、太陽光発電事業を行う事業者は肝に銘ずる必要があります。

太陽光発電ビジネスの行方



太陽光発電所を設置して、発電による売電益で、事業を成功させるには、現状では、固定買取価格が、30円以上必要です。
将来、太陽光発電所の設置価格が下がったとしても、発電事業だけの利益では、売電価格が24円になるところが、1つの大きな転機となり、ここからは、複合型のシステムとして、新規市場が形成されると思われます。
特に、他の産業と組み合わせたシステムが有効で、この分野では、現在市場開拓が始まっている、ソーラーシェアリングが有望な市場となる要素を秘めている。次に、太陽電池の発電効率が20%を超えて来ると、一般住宅の屋根が今一度、有望な市場となり、太陽電池と蓄電池を組み合わせた市場がさらに強化され、大きな市場を形成し、これにEV市場が連動すると思われる。
特に、蓄電池市場の開拓が今後の太陽電池市場を牽引する一翼を担うことになるであろう。
この時点で、各電力会社の電力網が、スマートグリッド化されていれば、電力網のタンジブル制御が可能で、必要な場所に必要な電力を送り出すことが可能になり、原子力発電の必要性は薄くなり、再生可能エネルギーの中でも、自然エネルギーを大幅に活用した、新規の産業構造に移行する要素が発生すると思われる。
大手電力会社は、送電網の分離に対して、新規の配電グループ会社を設立して、地域単位でのスマートグリットを強化して、この動きに対抗すると思われるので、ここに来て、PPSの存在が大きな夢を与えてくれることになるだろう。

2014.09
浅川太陽光発電所
所長 浅川 初男

本原稿は、個人での調査及び、地域特性から作成したものです。
解釈等には、充分注意をして、他の情報と比較することを御勧め致します。


本文中の、乱筆・乱文・誤字・脱字等は、知識の無さと笑止下さい。